森見登美彦が好きです。自堕落なもので。
最初は『夜は短し歩けよ乙女 』を読みました。ただひたすらに勇壮で可愛らしい黒髪の乙女と、実にダメでヘタレで滑稽な先輩の話です。京都に跋扈する魑魅魍魎と戯れながら、等身大な青春の清濁を併せ呑むのがとても楽しい。アニメ映画版では星野源が声優をしているらしいです。観たい。
何だかこじらせてるな、と自分で思う人には『四畳半神話体系』をお勧めしたいです。もっともっとこじらせることができるのではないか、そんな希望を手に入れることができると思います。好きなのは『有頂天家族』。あらゆるものへの愛が溢れていて、とても暖かく爽やかな気持ちになれます。
無駄に小難しく小賢しくて社会不適合な人物が多いのですが、全てとても魅力的です。それは彼等がその無駄を大いに自覚していて、とても情熱的そして真摯に迷走しているからかも知れません。
文体が特徴的なので合う合わないはあると思いますが、一度その堅苦しくも阿呆臭い言葉の呼びかけに応じれば、あとは人間的な登場人物達と勢いのある物語が心を掴んで離さないこと請け合いです。
以下、『夜は短し歩けよ乙女』の一節です。
これは彼女が酒精に浸った夜の旅路を威風堂々歩き抜いた記録であり、また、ついに主役の座を手にできずに路傍の石ころに甘んじた私の苦渋の記録でもある。読者諸賢におかれては、彼女の可愛さと私の間抜けぶりを二つながら熟読玩味し、杏仁豆腐の味にも似た人生の妙味を、心ゆくまで味わわれるがよろしかろう。
もしこういった言い回しが大丈夫であれば、あなたも森見登美彦の妖しくも清々しい世界へ拐かされてみるべきです。ぜひ。
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/09/01
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追伸:この前は辻村深月の記事を書いたんですが、西粟倉村にいる先輩が読む順番についてしっかり記述されていました。確かに「お、ひさしぶり!!」みたいな瞬間は辻村深月を読む時に嬉しいことのひとつ。